委託書店比較と現在の海外通販の状況について

『頭割り7パンフレット』をBOOTH・とらのあな・アリスブックスに卸し、
更に過去の使い勝手なども考慮して3書店の比較を制作してみました。

本文章は村田(@MurataSoni)個人による見解を多分に含みますが、
皆様が委託書店を選ぶ際の一助となりましたら幸いです。

BOOTH

頒布者・購入者ともにシェアが最も大きく、多くの人に届きやすいのが特長です。
ただし倉庫発送にすると頒布者の発送から購入者への到着までに2週間~3週間程度かかることがあり、
更に倉庫未納品で予約を受けると送料が高め(730円)になる点に注意が必要です。
倉庫を使わず匿名配送を利用した自家通販にすれば送料や日数は抑えられますが、
当然ながらその分の手間は覚悟する必要があります。
仲介業者を介しての海外通販についてですが、店舗(サークル)ごとに仲介手数料がかかる、ということはなく、
おまとめ梱包の手数料がかかるといったイメージで良いかと思います(※利用するサービスによっては違う可能性もあります)

とらのあな

知名度・シェアが高い一方、現在はクレジットカードの制限によりVISA・Mastercardの利用ができません。
しかし海外勢がとらのあなを利用する場合、元々仲介業者を間に入れているため、
仲介業者にはVISA・Mastercardが使用できるといった状況になっており、
海外からの購入の難易度には影響を与えてはいないようです。

アリスブックス

販売数は控えめながら返本リスクが低く、安心して長期的に預けられるのが特長です。
新刊既刊問わず、特別な条件等なく半年以上のお預かりを保証、と明言されています。
(ただし個人的な体感としては返本されたことが一度もないですね…。
 2021年6月に出した作品も2025年9月現在まだ取り扱ってくれています)
仲介業者を介さずに直接海外通販を行う販路を持っており、
クレジットカードも現在は制限なしで利用できるため、海外利用者の注文が見込める場合にも適しているといえますが、
実情としては委託作品数があまり多くないため、まとめ買い需要に応えきれず
国内・海外ともにいまひとつ利用書店に上がりにくいようです。

上記を踏まえてのご提案

・アリスブックス
・BOOTH/とらのあな以外の通販プラットフォーム
にメインで卸している方、あるいはそのご予定である場合、
BOOTHもしくはとらのあなの併用をおすすめしたいと思います。

そしてもう一つ、ご提案というよりはお願いに近いのですが、
・BOOTH
・とらのあな
を利用される場合、3~10冊程度の少部数でかまいませんので、アリスブックスとの併用をご検討いただけないでしょうか?
送料に関してはレターパックを利用すると数百円程度です。

先述の通り、現状アリスブックスからの返本リスクはかなり低めであり、
「今すぐ大量に売れる場ではないが、安心して長く作品を置いておける」
というアーカイブ的な利用メリットがあります。
扱う作品の種類が増えることで「ここを覗けばまとめて買える」という利便性が生まれ、
将来的には海外からのまとめ買い需要に応えられる土台になると考えています。
また国内利用者にとっても、とらのあなのクレジットカード制限やBOOTH倉庫の返本リスクの高さを踏まえれば、
頒布者側・購入者側どちらにしてもメリットがあります。
つまり、少しでも作品が増えれば、国内外双方にとって便利で安心・安価な通販の選択肢として成長していく可能性が高いといえます。
ただしデメリットもあります。とらのあなをメインで使用している場合、作品の取り扱い期間が専売と比べて短くなります。
とらのあな公式の案内では専売商品の場合6か月、併売商品の場合は3か月の預かり期間となっていますが、
双方ともにこの通りの期間で返却・あるいは破棄となることはどちらかといえば稀、というのが個人的体感です。
頭割りパンフレットの例で言うと
『併売を行った頭割り6パンフレット』7.5か月
『専売であった頭割り5パンフレット』17か月
の販売期間となっています。
(実例とはいえあくまでも過去の例かつ個人の一例であり、
 今後、もしくは作品そのものの状況によっては
 とらのあな公式の案内通りの期間に短縮される可能性もあるため参考程度にしてください)
あとは個々人の経理上の在庫・売上等の扱いや頒布先の案内などが若干複雑化する可能性があります。
※例えば確定申告をされている方の場合、長期的に在庫が残ると印刷費の計上がやや複雑になることがあります。
とらのあなの場合、専売期間が終了してからでもいいので、アリスブックスのご利用をご検討いただければと思います。
もちろんとらのあなでの取り扱いが終了した作品を移すだけでなく、準新作や既刊を少数でも置いていただければ、
アリスブックスのラインナップが厚くなり、利用者にとっても魅力が増すと考えています。
(この点についてはアリスブックスからも歓迎のお言葉をいただいています)
もしよろしければ、ご一考いただければ幸いです。

参考:とらのあなの併売に関してのQ&A
①専売となる場合、併売となる場合について具体的に教えてください
③専売から併売への切り替えや、本体価格を変更する場合の手数料はいくらですか?
④他社様の通販サイトが完売、通販ページが取下げ済み後に同一作品を弊社に委託される場合、専売とできますか?

謝辞

上記の3書店比較を制作するにあたり、現在の海外通販の実情をMaiki(@maikelwins)様にお聞きしました。

突然の不躾な質問にも関わらず、お友達の声まで聞いてとても丁寧に教えてくださったおかげで、
皆様にとっても大変有意義な情報となったかと思います。
Maiki様、本当にありがとうございます。

さて、なんと上記以外にも海外通販の成年本の通販事情や、使用されるサービスのリストをいただけました!

自分の作品が海外通販される場合どのような流れをたどるのか気になる方も多いかと思いますので、
それらに関しても以下にまとめさせていただきます。

海外通販・成年作品に関して

全年齢作品に関しては各種代行サービスにて問題なく購入できるが、
成年作品は受け付けてもらえないケースもあるそうです。
成人向け商品に対して規制が厳しい国の税関検査にひっかかった場合、
該当の成年作品だけではなく荷物すべてが没収される可能性も大きいため、
基本的に成年作品の購入は自己責任となっています。
実例として、A氏の場合は最初は問題なく購入できたが、なぜか段々関税に引っかかるようになり、
二回も荷物が没収されたため現在は買い物を控えている。
B氏の場合は現在も問題なくR18百合本を購入できているので、検査がランダムなのか、
あるいはGLよりもBLの方が厳しいか等の基準があるのか購入者側には判断はつかないとのことでした。

代理購入or荷物転送サービスによっても成年作品を購入できるところとできないところがあり、
更に配達先の国によっても取り扱い可能作品が変わる場合もあるので、
「○○ならR18購入できるよ」は明言できず、各自で調べる必要があります。

国ごとに法律が絡む問題でもありますので、海外の方から相談を受けた場合には
・購入は自己責任であること
・購入時には各サービスの規約を確認する必要があること

をあわせてお伝えいただければと思います。

海外通販向けサービス一覧

以下はMaikiさんやそのご友人が利用されている海外通販サービスです。
仕組みや使い勝手等の説明が分かりやすく、とても理解しやすかったので是非ご覧ください。

代理購入サービス

・AOCS
とらのあな直接提携の海外用代理購入サービス。
とらのあな通販でVisaやMastercardは使えないけど、なぜかAOCSでは使えるらしい(オプションとして出ているとのこと)。
それ以外にもPaypalやWiseも使えるので海外勢に優しくお支払いオプションが多い。

・Buyee
とらのあな/Booth/メロンブックス公認の第三者代理購入サービス。
こちらも問題なくVisaやMastercardが使えます。
使い方としては、購入したいものの詳細ページURLを入れて購入リクエストを出す。
その後、サービス側が代理に購入し、購入者に荷物を転送してくれます。

・Treasure Japan
・Worldshopping
第三者代理購入サービス。Buyeeと同じような流れで代理購入してくれます。
公認されてないので自己責任になりますが、今のところ無事購入できた報告あり。

荷物転送サービス

・転送コム(Tenso)
代理を必要とせず問題なく通販サイトから直接購入できる場合は、こちらの荷物転送サービスも利用可能です。
使い方としては、まずはこちらでユーザー登録してから転送サービス業者さんの日本住所をもらい、
それを購入者の郵送住所として使って買い物します。
いろんな通販サイトでお買い物したい場合、
荷物を全部転送コムでまとめてもらってから国際郵送してもらうほうが財布に優しい場合があります。

荷物転送サービスは他にもあるかもしれませんが、
Maikiさんと周りの人達は基本的にこちらを使われているそうです。

おわりに

昨今のクレジットカードやSNSの制限等、我々は常にそれに振り回される側ではありますが、
この先を見据え、場所を育てる、という選択肢もあるのではないかと私は考えました。
未来への投資、とも言えるかもしれません。
低リスク・低デメリットでそれが行えるのならば、悪い話ではないかもしれません。
各自がそれぞれのサービスの特長を理解し、無理のない範囲で工夫していただくことで、
今後も安心して創作物を届け合える環境が続いていけばと願っております。
村田